「あそこのパン屋さん、もう行った?」
そんな言葉があいさつ代わりに交わされるパンの街、ここつくばに新しいパン屋さんが2016年12月にひっそりと誕生しました。
賑やかな声が聞こえてくる小学校を過ぎ住宅街へ。風になびく白い旗が目に入ったら、そこが「季節の酵母パン punch(パンチ)」。
店主の愛称そのままに名付けられた小さな店内には、まるでインテリアの一部のように並べられたパン。果物などを発酵させてできた天然酵母を使ったそれらはもっちりとした食感、噛むほどにふわっと広がる自然な甘みがくせになる美味しさ。
自然豊かなこの土地には、大地が育む美味しいものが豊富にある。今だからこそ味わえる「旬」を大切にしたいと季節の果物などを使った天然酵母パンは、「punch」でしか出合えない味を目指しパンづくりと向き合う店主の真っ直ぐさを感じるものばかり。
初めて食べた時、その深みのある味わいにびっくりしたいちごの天然酵母の山食パン。どんな酵母で作られているのか見せてもらいました^^
同市内のいちご農家「苺家-ichigoya-」の紅く艶やかないちごを贅沢に使った酵母はワインでいうならフルボディのように、ふくよかで重みのある香りが特長だそう。
固く締めた瓶の蓋を突き破らんとする勢いで、プシュッと吹き出てしぶきをあげる元気な酵母。単なる材料ではなく、まるで生き物のような酵母と共にあるパンづくりは、思考錯誤の連続。気温や湿度など外的影響を受けやすい天然酵母は、思い通りにいくこともあれば、逆もまた然り。
「成功と失敗を重ねながら、予想だにしない結果をもたらしてくれることも。自然の力を借りた酵母づくりは、実験をしているようで没頭させられます」
昔から理科の実験に夢中になっていたという店主。化学反応を楽しむpunch少年の面影をそこに見た気がしました。
ひらめきと直感のままにパンを作る“punch”こと青木たかひろさんと、柔らかな接客が印象的な妻・阿弓さん。それぞれ筑波大学芸術専門学群で版画を専攻し、卒業後は絵描き、アーティストの道へ。創作活動を生業としていたふたりにとってパンを作るという選択は特別なことではなく、自然な流れの中で行き着いたもの。
独学、パン屋での修業を積み、結婚を機に住居兼店舗を探してお店を開くことを決意。一度は阿弓さんの出身地である栃木県での場所探しも検討したものの、市内で生活が完結する便利さと暮らしのそばに自然がある日常、学生時代から住み慣れた街への愛着もありつくばでのオープンに至りました。
「取材?ここのパン、とっても美味しいのよ。それに、とても良い人たちだからどんどん宣伝してあげてね」
取材中、そんな温かい言葉をかけてくれる人の多いこと。オープンから約5カ月。パン屋としての歩みはまだまだ始まったばかりだけれど、パンはもちろん、その人柄をも応援したくなるような魅力が人々を惹きつけているようです♪
筑波山麓で無農薬栽培した小麦ふすまを使ったふすまねこは、一つひとつ表情が違って茶目っ気たっぷり。どの子と帰ろう~♪と悩む人も多い「punch」の人気モノ。
「地場産やつくばに縁があるものなどを使って、つくばにあるパン屋だからこそ作れる味に挑戦していきたい」その想い、味に共感するかのようにファンを増やし続けています。
何かに導かれるように越してきた建物の庭には、柚子や梅、ブルーベリーの木が。
家の庭でなった果物たちは、どんな味わいをもたらしてくれるのか。つくばの「旬」が練り込まれたパンとの出合いに、これからも楽しみいっぱいのみっきぃがお届けしましたᕕ( ᐛ)ᕗ
【季節の酵母パン punch】
住所:茨城県つくば市要320-1
Tel:050-1537-7860
営業時間:10時~19時(売切れ次第終了)
定休日:火・水曜