卒業研究において行う実験はいくつかあり、
その中で細胞が分裂して増えていくのを記録する、というものがある。
作業はさほど難しくなく、一見簡単そうに見える。
とは言え、問題がひとつある。
計測の間隔がなんとも微妙である、と言うことだ。
これは非常に悩みの種で、
豊かな人間活動を行う上で非常に障害となってくる。
というのも、計測は3時間おきに行われ、
一度の計測にかかる時間は準備を含めて1時間。
つまり、一度に自由に使える時間は最長2時間であり、
その中でやるべきことを行っていく必要がある。
この計測を行っているときの一日の流れはこのような感じだ。
0時からはじめたとして、
00:00 計測
01:00 2時間就寝
03:00 計測
04:00 洗濯
06:00 計測
07:00 食事
09:00 計測
10:00 研究室にて他の実験
12:00 計測
13:00 食事
15:00 計測
16:00 論文研究
18:00 計測
19:00 食事
21:00 計測
22:00 だらだら
24:00 計測
以降細胞の増加が頭打ちになるまでこのサイクルを繰り返す。
これの終盤にもなってくると、
次第に時間の感覚が麻痺し、
赤く染まった太陽を見て、
果たしてこの太陽は昇るのか、沈むのかさっぱり分からなくなってくる。
冷静に考えれば太陽の位置を見れば分かることなのだが、
そんなことを考えることが出来る余裕すらなくなってくる。
こんな風に少々過酷な生活を送ることになるわけで、
アフターファイブに映画を見たり、お酒を飲んだりなどもっての外で、
寂しい思いをすることになるのだが、
そんな生活の中で、最近ある楽しみを見つけた。
朝4~5時に計測がある場合、
実験室で作業をしていると、朝日が昇り始めて少し経ったくらいの時間帯に出くわす。
筑波大の建物は明るい茶色でほぼ統一されており、
周囲には木々の緑が多い。
この時間というのは朝日がその景色を丁度いい具合に染め上げる瞬間であり、
それを横目で眺めつつ作業するのはなんとも心地いい。
実験に追われ日常に多くの制約がかかる中で、
大きな楽しみは確かに減った。
とは言え、だからこそこうして些細な楽しみを見つけられるようになり、
より、今までは気にも留めなかった色々な物から楽しみが得られるようになってきた。
この生活、悪くないと思う。
<文責:伊藤>