みなさん、こんにちは。つくばスタイル特派員のしらゆきです。
国の研究機関の約3割が集積しているつくば市では、4月15日から21日までの「科学技術週間」の間、市内にある、国や民間の研究機関の一般公開や特別イベントが開催されました。
普段は立ち入れない研究所などを見学し、どのようなことを研究している場所なのかを知ることのできる絶好の機会です。
この日私が訪れたのは、つくば市苅間にある「安藤ハザマ技術研究所」の一般公開です。
つくばエクスプレス(TX)研究学園駅から徒歩10分ほどの場所にある安藤ハザマ技術研究所は、1992年に開設されました。
7万平方メートルを超える広大な敷地を有し、本館、8つの実験棟、屋外実験場などで構成されています。コンクリートや構造物、環境関連技術など研究開発の内容は多岐にわたります。
この日の一般公開で、私がまず訪れたのは、「テトラポット」の制作体験です。
テトラポットとは、海岸などに設置されている波を小さくする消波ブロックのこと。実物はとても大きなものですが、今回はこのミニチュア版を作る体験ができました。
使用するのは、砂、水、セメント、色粉、型枠です。色粉は数種類ある色の粉から好きなものを選び、自分のお気に入りの色で作れました。
まず、砂、セメント、色粉を袋の中で混ぜ合わせます。よく混ざったら水を入れますが、この時すぐによく混ぜないと固まってしまうとのこと。手際よく混ぜていきます。
粉が混ざったら、今度は金属製の型に流し込みます。空気が入らないように、型をテーブルにトントンと叩きながら、型の隅々まで流し込んでいきます。
上まで流し込めたら、30分ほどかけて乾かしていきます。今回は特殊な材料を使用しているため、早く乾いて完成できるのだとか。完成が待ち遠しい♪
次は、コンクリートの床仕上げの見学です。
倉庫などの大きな建築物の床はコンクリートで仕上げられることが多いのですが、これを職人の方が手仕事で行うのは、長時間腰をかがめての体勢を続ける作業となり、かなりの重労働なのだそう。
作業軽減化を目指し、自動で床仕上げを行うコンパクトな支援ロボットが開発され、すでに実用化されているとのこと。そのロボットを操作できる体験がありました。
それは、まるで家庭に普及している自動掃除機のように回転しながら滑らかに動いており、ラジコンのようなリモコンを手元で操作することで回転させたり、前後させたりとコースを自在に動かせます。
また、プログラミングをすれば決まったコースを通ることも可能なため、一人で複数台のロボットを同時に操作することもできるのだそう。
実際に操作をさせてもらいましたが、慣れれば操作自体は難しくなさそうでした。これにより均一の仕上がりが可能となって、人手不足解消などにも役立つとのこと。生産性向上が期待されます。
続いて、人工気候室で「北極」を体験です。
さまざまな気象条件のもとで、住宅設備の耐久試験などを行うための人工気候室では、マイナス30度の空間を体験できます。
私もいざ室内へ!一歩足を踏み入れると、まさにそこは極寒の世界!薄着ではとても耐えらず、「無理~!」とすぐに退出してしまいました。
こちらでは、人工気候室が冬の屋外であるマイナス30度、隣接する大型恒温恒湿室では屋内を想定した20度が設定され、双方の境界壁に設置された窓ガラスによる断熱性能を比較しているのだそう。
一般的なペアガラスは結露が発生していますが、高性能トリプルLow-Eガラスにはそれがほとんど見られません。隣り合った二つの試験室の温度差を利用して、さまざまな検証実験が行われています。
今度は、音について知ることのできる残響室の見学です。
残響室とは、いつまでも音が響くような仕組みが施された音響実験室のこと。壁や天井に平行な面を作らないようになっている部屋が二つ隣り合っており、部屋の中で音が反響しあうようになっています。
見学用に用意された楽器を鳴らしてみると、音が室内に響き渡ります。
こちらでは、二つの部屋の間の境界壁にさまざまな材質の建具を設置することで、隣室への音の響き具合を調べるなどの遮音試験を行っているのだそう。
また、演奏会などで使用されるホールを建設する際、音がホール内で均一に聞こえるように、それに適した材質を調べるためにも使われているのだとか。
シーンに合わせた快適な音空間を作るために、ここでさまざまな実験がされているのですね。
また、音響・電波無響室は、残響室とは反対に音が全く響かず、電波も妨げる空間となっています。たくさんの正方形のクッションが部屋の天井や壁面を覆っているような独特の部屋の作りになっています。
こちらでは、「あなたの耳年齢をチェック」の体験ができました。聞こえてくるのは電波の小さな音ですが、年齢によって聞こえる範囲が決まっているそうです。
小さなお子さんが聞くと「うるさい」と言うほどの音だそうですが、大人には全く何も聞こえない…という現象が起きるのだとか。私も試してみましたが、年齢相応の音しか聞こえませんでした。
続いて、実際の建物の床下部分を見るという貴重な経験ができました。
およそ1800トンもの重さのある2階建ての建物を、直径80センチほどの積層ゴム8台で支えている様子を見せてもらいました。1台あたり200トン強もの重さを支えていると聞き、この積層ゴムの重要性を再認識しました。
また、高層マンションで地震による揺れを軽減できたデータの展示があり、実際に免震に生かされていることが分かりました。
植物工場「多幸畑(たさいばたけ)」では、マット給液方式による液肥野菜システムを間近に見ることができました。
こちらでは、2006年頃から地面を使わず、高い位置で液肥を使った野菜栽培に取り組んでおり、ホームセンターで購入できるような野菜の苗を栽培しているのだそう。
以前は蛍光灯の熱で高温になっていた室内ですが、現在はタイマーで自動点灯される野菜用LEDの照明が使われ、室内の温度も抑えられています。害虫被害が少なく、農薬をほぼ使わないことから、クリーンな野菜づくりが可能となっています。
空き倉庫などの空間の活用が期待できますね。
最後にテトラポットを受け取りに行きました。型に流し込んでから30分ほど経ちましたが、果たして出来具合はいかに!?
型のねじを外していくと…見事テトラポットが完成していました!こんな短時間でもしっかり固まっていましたよ。
小さなお子さん連れの方から、散歩ついでに立ち寄ったと思われる近所の方まで、この日の一般公開を幅広い年齢層の方が訪れていました。
今回の一般公開を通して、「安藤ハザマ技術研究所」が建設分野だけでなく、土木、環境など多岐にわたる研究が行われていることを知りました。
見学場所ごとに説明してくれるスタッフの方の分かりやすい解説のおかげで、とても理解が深まりました。貴重な機会なので、今度は子どもたちも連れて訪れたい場所です。
以上、しらゆきがお届けしました。
■安藤ハザマ技術研究所
所在地 つくば市苅間515-1