みなさん、こんにちは。つくばスタイル特派員のしらゆきです。
平昌2018五輪冬季競技大会が閉幕しました。
今回のオリンピックにもさまざまなドラマがあり、選手からたくさんの感動をもらいました。
そして、まもなく開催されるパラリンピックでは、障がいがあっても競技に打ち込むアスリートの活躍が見られることでしょう。
そのパラリンピック選手や障がいのある方が用いる義手や義足。
それらを主に製作する会社がつくば市にあり、取材にお伺いしました。
TX(つくばエクスプレス)万博記念公園から程近い、つくば市大白硲にある「幸和義肢研究所」は1983年に創業。高齢者や障がいを持った方の生活品質向上のために、義肢装具や車いす、補聴器などの福祉用品、介護用品などの開発・製作に取り組む福祉機器のトータルサポート企業です。
近年は障がい者雇用にも力を入れているのだそう。
この社屋は2011年に完成したもので、圏央道つくば中央インターチェンジ、常磐道谷田部インターチェンジから車で約5~10分、TX万博記念公園駅、研究学園駅から車で3~5分と、利便性の高い場所に位置しています。
車でも鉄道でもアクセスの良さが重要ということから、この場所に新社屋を建てることに決めたのだとか。
社屋は約3000坪と広大な土地を有し、駐車場も実に広々としています。
建物自体が平屋の構造で、もちろんバリアフリー。車いすの方や障がいのある方が来られるとあって、建物内の通路は余裕をもって確保されています。
実際に義肢を製作する作業場を見せていただきました。
義肢とは、病気や事故で四肢を切断したときに用いる義手や義足のこと。
装具とは、機能障害の軽減のために使用する補助道具のことで、腰に巻くコルセットなど身体の各部をサポートするものです。
作業場には、義肢や装具を作るさまざまな部品や工具が所狭しと並び、義肢、車いす、装具などの部門ごとにテーブルが分かれています。
製作工程はまず石膏で型を取り、機械で削って形を作るところから始まり、担当部門ごとに振り分けて、義肢・装具を完成させます。
製作スタッフの中には、ご自身に障がいがあって義肢・装具を使っている方もいるのだそう。実際に装着しているからこそ、より快適で利用しやすい提案ができるのだとか。
製作は、ほぼ手作業。
障がいは人それぞれ違います。そのため、義肢や装具はすべてが一人ひとりに合ったオーダーメイド。障がいを持った方の「身体の一部」ともなる義肢・装具がここで作り出されています。
小さなお子さん向けの装具には、名前が刺繍されていたり、キャラクターを用いたカバーをつけることも。利用する方のことを考えて、さまざまな工夫がされています。
義足の試歩行室では、たくさんの義足の部品が並んでいます。
バーがある室内で、義足を装着した感触を試すことができます。
最新型の義肢は、コンピュータ制御や人工知能が搭載されているものもあるのだそう。
車いすのショールームでは、たくさんの種類の車いすが展示され、実際に試乗することができます。
私も初めて車いすを体験させていただきました。自分の体に合った車いすに乗ることが大事とのこと。
ゆっくりと両脇についているホイールを回すと、想像以上に軽々と進みました。
操作のコツを教えていただくと、左右に曲がったり、Uターンもすぐにできるようになりました。
オーダーシューズやインソールの用意もあります。
外反母趾や偏平足などで足や靴にお悩みの方に、ぴったり合ったものを作製してもらうことができます。
2016年には、敷地内に「ワーク・イノベーションセンター」(WIC)と「つくばイノベーションパーク」(TIP)が開設されました。
WICとは、障がい者就労継続支援B型、就労移行支援事業所で、障がいのある方でも働ける社会を目指し、幸和義肢研究所内に設立されたワーキングステーションです。
こちらでは、義肢装具のパーツの製作や、印刷業務など、さまざまな業務を請け負っているのだそう。
この日は、義肢装具製作で用いる部品を同じ長さに切る作業や折り目を付ける作業、PCを使ったデザインの仕事をされている様子を見せていただきました。
ちなみに、社員の名刺や会社案内もこちらで印刷されています。
TIPは、屋外型の路上コースで、車いすの練習、試乗、義足などの試歩行などのために設けられた施設です。
車いすの乗り方を教える「教習所」のような役割も担っており、これだけの設備が整っているのは、日本でもまだ数少なく、民間企業ではなおさら珍しいとのこと。
ここには、横断歩道から歩道に乗り上げる2センチほどの段差があったり、路肩の側溝にある金属製の網「グレーチング」が網目の幅に合わせて3種類用意されています。この他にも、緩やかな坂道であるスロープも傾斜角度によって4種類。片流れ勾配や線路などもあり、街中にあるあらゆる状況をシミュレートできます。
たとえば、グレーチングの溝に車いすのホイールがはまりやすいため、そうならないための訓練やコツを学ぶことができます。
多くの人がよりよい環境で日常生活が送れるよう、これからも進化していく「幸和義肢研究所」。
福祉の分野で日本でも有数の設備を整えた企業が、研究学園都市であるつくば市にあることをうれしく思いました。
以上、しらゆきがお届けしました。
■株式会社 幸和義肢研究所
住所 つくば市大白硲341-1
電話 029-875-7627