微かに聞こえ始めたセミの声。住宅地のすぐそばに田畑が広がるのどかなロケーションで、ひときわ目を引く「かき氷」の幟。今年も、つくばに夏がやってきたᕕ( ᐛ)ᕗ!!
夏の訪れと共に看板をかける、夏だけのかき氷屋。シャクシャクとした食感、ふわっと消えるような氷と溶け合う、懐かしさを味わうシロップ。
「あ、この味。この感じ。」
クーラーじゃ体が冷えすぎるからって、母がたまに作ってくれたっけ。友だちと一緒に出かけた夏祭りで、不気味に染まった舌を見せあい笑ったな~(= ̄∇ ̄=)
そんな、忘れていた夏の楽しい記憶を呼び覚ましてくれる「粉雪屋」。
氷を削るのは、現在2児の母でもある篭谷さおりさん。茨城県で生まれ育ち、大学進学を機に北海道へ。そのまま就職するも、研究所で働きたいという夢を追いかけ研究機関が集積しているつくば市へ移り住み転職。多忙ながらも充実した時間を過ごし社会人として順調に経験を積む一方で、仕事と生活の調和が取れた暮らしを模索し続けていたそう。
結婚や出産、子どもの成長など、将来迎えるであろうライフイベントに柔軟に対応しながら働いていくためにはどうしたら良いのか。好きなことを通じて、社会とつながることができないか。
「何か、できないか」あらゆる可能性を視野に入れ考えを巡らせていた頃、手繰り寄せた子ども時代のある“甘い記憶”がその道を拓くことに。
「子どもの頃から、私も両親も夏祭りが大好きで。自分が暮らす地域の祭りだけでなく、他の地域にもよく出かけては、縁日で売っているかき氷を家族で食べていました」
楽しかった思い出と共にあった、夏の味。これなら、家族のそばで楽しく続けることができるかも。
どちらかと言えば慎重に事を進めるタイプのさおりさんに対し、話を持ちかけてから数日後には楽しげに削り機を探しはじめた旦那さん。「かき氷といったら夏でしょ。今年の夏、もう来ちゃうよ」家族に背中を押されたことも手伝って、第一子を出産した2012年の夏、ドキドキしながらかき氷機の前に立つ自分がいた。
構想を練り始めてから半年も経たずしてスタートした新境地での挑戦。楽しみな反面、不安な気持ちが全くなかったと言えばうそになる。だけど、「おいしい」と顔をほころばせる人たち、その姿を見つめる人たちの嬉しそうな様子を見る度「やってよかった」という喜びは日々膨らんでいった。
夏の力強い青空の下、気持ちよさそうにそよぐ「かき氷」の幟。その涼しげな様子に、思わず足を止める近所の人も多い。
「あ!今年も始まってる!」
「去年、ここにかき氷食べに来たんですよ」
お店が開く頃、子どもたちの賑やかな声色で辺りは夏色を増す。目の前に置かれる、魅惑の一杯。シャクシャクと響く氷の音と共に、口いっぱいに広がる甘い蜜の味。スーッと食道を通るそれはひんやりと冷たく、優しく身体に溶けていく。
夕方過ぎ、慣れた様子で注文をする男の子。幼稚園生の頃から通い、一人で訪れるのは今年が初。
「ここのかき氷は、世界一だよ」
氷を食す佇まい、他のお客さんが来たら席を譲る紳士ぶりといい、いつの間にか常連客の威厳さえ感じさせる少年はもう小学生。街のかき氷屋は、子どもたちの成長を見守る場にもなっている。
また、児童館で知り合った親子や噂を聞きつけた人たちがやってくることもあり、ご近所さんだけでなく、同じ街に暮らす人たちとの輪もゆるやかに広がっている。
「今年も楽しみにしています!」そんな声に鼓舞され、今年で6回目の夏を迎える「粉雪屋」。毎年、オープン日が迫ると緊張するというさおりさんをそばで見つめるのは、「う~ん♪この味、この味♪」誰よりも美味しそうにかき氷を頬張るふたりの看板息子たち。そして、独身時代から一緒に暮らしているという家族の中で一番付き合いの長い茜。クリっとして、一本筋の通った眼差しはさおりさんにそっくり。やんちゃ盛りの弟たちを、優しく見守っている。
18時。日が暮れ始めたら、店仕舞い。散歩の道すがら、カエルやバッタを追いかけ、転んで泣いて、また笑って。つくばの大空からこぼれ落ちそうなオレンジ色の夕陽が、家族の時間を温かく包み込んでいく。
出産や子どもの成長、家族の転勤など、女性を取り巻く生活環境は多様に変化していく。家族と過ごす時間を大切にしながら、好きなことからヒントを得て自分の道を切り拓いたさおりさん。家族はもちろん、訪れた人一人ひとりの笑顔が嬉しくて今日も真っ白な氷に思いを込める。
【粉雪屋】
住所:茨城県つくば市篠崎2129-9
営業時間:月~金 15時~18時/土日祝 14時~18時 ※臨時休業あり。ブログで営業日をご確認ください
夏休み、かき氷の食べ過ぎで必ずお腹を壊していたみっきぃがお届けしましたᕕ( ᐛ)ᕗ